多数傷病者受け入れ訓練について
11月7日に大規模災害時、多数傷病者受け入れ訓練を行いました。入院患者の皆様や関係各所の協力もあり無事に行うことが出来ました。ご協力ありがとうございました。
当院は多数傷病者が発生した場合、災害拠点病院として後方支援体制を構築しなければなりません。災害時に迅速な医療対応を行うためには、院内災害対策本部における円滑な情報処理が重要となるため、今回の訓練では院内災害対策本部での情報処理を中心とした訓練を実施しました。
訓練想定は「近隣駅で脱線事故が発生し多数傷病者が発生」とし、院内災害対策本部は実動訓練を行い、傷病者を受け入れる各トリアージエリアは机上シミュレーション訓練を行いました。院内災害対策本部は集められた情報を基に院内全体を把握し適切な指令を発信しなければなりません。判断に迷ったり、情報収集方法に躊躇したりしながらも、試行錯誤しながら院内全体の情報整理を行いました。
今回の訓練から、現在の災害マニュアル改定や院内災害対策本部アクションカード作成などの課題も多く見つかりました。また、災害はいつ起こるかわかりません。災害訓練を経験することはパニックになる模擬体験もできたと考えます。
救命救急センター 救急看護認定看護師 井筒隆博
熊本地震に関わる活動②
「平成28年熊本地震における北九州JMAT活動報告」
DMAT業務調整員 末吉 宏成
平成28年
【4月14日】(木)21時26分【震源地】熊本県熊本地方(東経130.8 北緯32.7)
【震源の深さ】10Km【規模】マグニチユード6.4【津波の心配】なし
熊本県を震源とする地震が発生。同県益城町で震度7を観測。熊本県玉名市、熊本市、宇城市、西原村で震度6弱。大津町、菊陽町、南阿蘇村、八代市など広い範囲で震度5弱以上を観測した。宮崎県椎葉村でも震度5弱。福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、鹿児島県、山口県など周辺県でも震度4以上を観測。
【4月15日】(金)0時03分【震源地】熊本県熊本地方(東経130.8 北緯32.7)
【震源の深さ】10Km【規模】マグニチユード6.4【津波の心配】なし
熊本県宇城市で震度6強を観測。同県内の広い範囲と福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、宮崎県、鹿児島県で震度4以上を観測。JR熊本駅で九州新幹線の脱線が確認。
【4月16日】(土)1時25分【震源地】熊本県熊本地方(東経130.8 北緯32.8)
【震源の深さ】10Km【規模】マグニチユード7.1【津波の心配】津波警報等(大津波・津波警報あるいは津波注意報)を発令。
熊本県南阿蘇村、大津町、熊本市、宇城市、嘉島町などで震度6強を観測。マグニチュードは阪神・淡路大震災と同じ規模。震度6弱を同県阿蘇市、八代市、玉名市など、大分県別府市、由布市で観測。熊本県では、小国町、産山村、高森町、山鹿市、甲佐町などが震度5強以上を観測。同県内の広い範囲と福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、鹿児島県、山口県で震度4以上を観測。
上記熊本県地震発生のため、熊本県医師会および福岡県医師会の要請により、北九州市医師会は、北九州JMATを編成。北九州医師会と連携して、市立八幡病院DMAT隊員との混成チームにて4月20日(水)から避難所中心の支援に出動致しまたので報告致します。
北九州JMAT2016-1班出動に際し、薬剤調達・物資調達・移動車両調達・避難所情報等収集活動を行うために、市医師会長の指示のもと、北九州医療救護計画に則りDMOC(災害医療・作戦司令センター)避難所支援班・調整班の立ち上げも行われました。
○下記に4月20日~4月22日までの避難所支援活動の記録を掲載致します。
~DMAT技能維持研修に参加して~
平成28年6月4~5日(鹿児島)、平成28年度第1回九州沖縄地区DMAT技能維持研修に参加しました。DMATの更新には5年間に2回の技能維持研修への参加が必要です。災害時には傷病者の処置も重要ですが、災害対策本部、災害現場などとの情報共有や発信、受信が最重要です。技能維持研修では、その情報伝達訓練を含めた講義があり、ロジスティックのみならず、医師、看護師の情報処理能力向上につながるものであり、大変勉強になりました。
看護部 橋本 真美
G7 北九州エネルギー大臣会合 医療対応
去る5月1日、2日にG7エネルギー大臣会合が北九州市で行われ、当院からも救急科の井上、田口と救急外来の井筒が医療対応のため会場で待機しました。また、期間中は当院敷地内に除染テントを設置して不測の事態に備えました。幸い緊急対応を要する急患や災害対応が必要な事態は発生しませんでしたが、日頃から連携して活動している消防隊・救急隊の方々と改めて救急・災害医療を見直す良い機会になりました。
救急科医師 田口 健蔵
北九州地域DMATブラッシュアップセミナー
5月21日の午後に小倉の北九州病院本部で今年度最初の北九州地域DMATブラッシュアップセミナーが開催されました。今回は当初の予定を変更し、「平成28年熊本地震」の振り返りを行いました。当日は県内他地域だけでなく山口県、佐賀県、長崎県から50名を超える方々にご参加いただき、実際の活動について各施設からの報告を行いました。
場所や時期、活動内容も様々な多施設からの報告が行われ、自らの活動を振り返り、また次なる災害に向けての準備という意味でも他の施設の活動を参考にすることができた大変意義深い会となりました。
時間の関係上ディスカッションの時間があまり取れなかったため、現在各施設で行われている報告会・反省会の内容も踏まえ、次回の本セミナーは同じテーマでディスカッション中心に行いたいと
考えております。
今回の報告の中で、過去の本セミナーで築くことのできた「顔の見える関係」が非常に役立ったと何人もの方におっしゃっていただいたことは主催者としてうれしく思います。
救急科医師 田口 健蔵
熊本地震に関わる活動①
熊本地震において被災された皆様の早期復興を心よりお祈り申し上げます。
4月14日21時26分、小児救急センターで勤務中に患者さんの携帯から一斉に緊急地震速報が流れました。私は、はじめ「大きな音の着信音だな」と思い、まさか九州で地震が起こるとは想像もしていませんでした。
揺れがおさまった後、どこからか「熊本で震度7」という声が聞こえました。DMAT自動待機基準であるとすぐに認識し、出動準備に入るため患者さんの申し送りと、看護師長に勤務調整を依頼し準備を開始しました。DMAT出動物品リストは作成してありましたが、災害の規模や種類により多少変化します。情報が少ない中で不足なく準備するための焦りと不安が強かったことや、他のDMATメンバーが参集したときの安堵感を強く覚えています。
4月15日1時59分、八幡病院DMATは医師2名・看護師1名・業務調整員2名の計5名で熊本にDRカーで出動しました。5時05分、DMAT活動拠点本部である熊本赤十字病院に到着しました。熊本の町は多少の被害がある程度で、免震構造である熊本赤十字病院のライフラインは全て支障がない状況でした。九州各県からDMATが続々と到着し災害支援体制が強化されていきました。八幡病院DMATは本部業務補助と益城町の避難所状況の確認を行いました。同日17時30分に一旦活動を終了し、22時20分八幡病院に帰還しました。
4月16日1時25分頃、本震が起きました。八幡病院に暫定災害対策本部が設置されたため自主登院し、3時30分頃に帰宅、4時50分にDMAT派遣要請があり病院に向かいました。6時15分、八幡病院DMATは医師3名・看護師2名の合計5名で熊本にDRカーで出動しました。9時22分に活動拠点本部である熊本赤十字病院に到着しました。熊本の町は、建物が多数倒壊し、駐車場やグランドには車中での避難者が目立ち、コンビニエンスストアの外には人が列をつくり、4月15日とは全く違う状況でした。免震構造である熊本赤十字病院の建物も一部破損しており、またライフラインにも影響が出ていました。
八幡病院DMATは九州労災病院DMATと共に被災した病院の状況調査を行うミッションを受け、熊本セントラル病院に向かいました。その途中で、停電のため信号がつかない道路を運転することが怖かったことを覚えています。熊本セントラル病院ではライフラインが途絶したうえに、スプリンクラーの損傷によって院内が水浸しになっていました。病室や電子カルテなど使用できない設備があるにもかかわらず、そのような状況下でも救急車で搬送される傷病者を受け入れていました。入院患者は約200名で、地震による負傷者はいませんでした。酸素や吸引が必要な入院患者さんは停電していない隣接するホテルのロビーに移動させ、その他の患者さんはリハビリ室やデイルームの床にマットレスを敷いて寝かせている状況でした。状況調査後に同院の幹部と協議している間は病院支援としてDMAT看護師は病棟や外来看護業務を手伝いました。外来でCPA患者対応などを行い、被災した状況下での医療活動の難しさを痛感しました。
熊本セントラル病院の全患者転院搬送(病院避難)が決定し、転院先や搬送手段の確保を開始しました。地震により混乱した中での転院先や搬送手段の確保、時間などの連絡調整は困難を極めましたが、ミッションリーダーである田口医師が各機関との連絡や調整を的確に行い全患者の転院搬送を可能にしました。熊本セントラル病院には療養目的の患者が3~4階に入院していたため、まず1階まで患者を車いすに乗せたまま移送することを繰り返しました。階段で降ろす作業も体力を使いましたが、床にマットレスで寝ている患者を起こして車いすに移乗することが予想以上に体力を使いました。県外の転院先に搬送するためのバスや救急車、自衛隊車両や航空機に全ての患者を乗せ終わったら21時を過ぎていました。23時40分に全ての活動を終了し、3時に八幡病院に帰還しました。
当然のことではありますが、熊本地震でのDMAT活動は非日常の経験ばかりであり、災害支援の難しさを痛感しました。今回の活動で多くの学びと課題があり、今後は災害拠点病院のDMAT隊員として課題を1つ1つ改善していきたいと思います。
看護部 井筒隆博
山陽新幹線 福岡地区テロ対応訓練
4月1日の夜、新幹線の営業運転終了後にJR西日本の主催でテロ対応訓練が行われました。
本訓練ではJR西日本の他、福岡県警察、北九州市消防局、北九州市立病院(八幡病院・医療センター)から多数の職員が参加し、走行する新幹線車両とJR小倉駅を舞台に、不審者による薬物散布によって負傷者が発生したとの想定で行われました。
JRは乗務員と指令所の情報伝達、列車内や駅構内の乗客の避難誘導を、警察は犯人確保を、警察・消防のNBC対応チームは乗客の救出や除染、原因物質特定を、消防とDMATは傷病者のトリアージ、応急処置、搬送をそれぞれ担当しました。
普段あまり連携することのない組織と、列車内や駅構内という限られたスペースでの活動となり最初は戸惑いもありましたが、消防と医療は日頃から顔の見える関係ができているため、大きな混乱はなく訓練は終了しました。
トリアージポストや救護所の設置場所など、今後の検討課題も見つかったため、関係各所と協議していきたいと思います。